TAKA.K氏が紐解く本書を読むまで、私は伝説の相場師・加藤晃という人物を全く知らなかった。しかし、ページをめくるうちに、私は「やはりな」という深い納得感に包まれていった。それは、彼が単なるテクニシャンではなく、その投資哲学の根底に、揺るぎない精神性と信仰を持った人物だったからだ。
一目均衡表を大成させた「一目山人」が深い信仰心を持っていたことは知っていたが、加藤晃氏もまた、仏教に深く精通し、四国遍路よりも過酷と言われる「一万回御真言行」を何度も実践していたという。その弟子である著者までもが同じ修行を積んでいたという事実に、私は衝撃を受けた。彼らにとって、相場とは単なる金儲けの場ではなく、精神を鍛え、真理を探究する「道場」そのものだったのだ。
この本のクライマックスとも言えるのが、東京地検特捜部の取り調べを受ける場面だ。インサイダー取引を疑う検察に対し、加藤氏は動じない。なぜなら、彼の眼には、相場というものが、人力を超えた大きな力――神仏の力、あるいは老子が言うところの「無為自然」――によって動かされていることが、はっきりと見えているからだ。そのことを知らない人間が、人の力だけで相場を動かせると信じ込み、他者を疑う。彼の目には、そんな検察官の姿こそが「愚か」に映っていたのだろう。
このエピソードは、加藤氏の投資哲学の核心を突いている。チャートを読み解く技術は、あくまで表層だ。その奥にあるのは、市場に対する畏敬の念と、我欲を捨て、大きな流れに身を任せるという謙虚な姿勢。それは、祈りにも似た精神状態なのかもしれない。
この本は、私にテクニック以上に大切なものを教えてくれた。それは、日々のチャート分析やトレードそのものが、心を整え、我を消すための「修行」になり得るということだ。加藤氏のように神仏の境地に達することはできなくとも、私もまた、目の前の相場に真摯に向き合い、淡々と自分自身の修行を続けていこう。そう、強く心に誓った。
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