毎日同じことの繰り返しのようで、時々ふと心が疲れてしまうことがある。そんなとき、何か心が軽くなるヒントはないかと探していて出会ったのが、糸井重里さんの『ボールのようなことば。』だった。
この本には、壮大な物語や難しい理論は書かれていない。あるのは、日常の中からすくい上げられたような、素朴で温かい言葉の数々だ。糸井さんは、これらの言葉を「ボールのようだ」と言う。それはきっと、一方的に教え込むのではなく、相手が受け取りやすいように、ポンと手渡してくれるような優しさの表れなのだろう。
私が一番ハッとしたのは、「『いま』の自分を、ちゃんと面白がることだ。」という言葉だった。私はいつも、「もっとこうなれたら」「あの時こうしていれば」と、過去や未来のことばかり考えて、目の前の「いま」をおろそかにしがちだった。しかし、この言葉は、どんな状況であれ、今の自分自身の中に楽しみや発見を見出すことの大切さを教えてくれた。退屈だと思っていた通勤時間も、道端の花に気づいたり、空の色を眺めたりするだけで、少し特別な時間に変わる。そう気づかせてくれたのだ。
この本を読んでから、私の世界は少しだけ色鮮やかになった気がする。大きな変化ではないかもしれない。でも、ポケットの中に小さなお守りを入れているような、そんな安心感をこの本は与えてくれる。心が曇り空になったとき、そっとページをめくりたい。そんな大切な一冊になった。
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