『あおい』というタイトルを初めて見たとき、私は青春の瑞々しさや、少し切ない恋物語を想像していた。しかし、西加奈子さんが描く「あおい」は、そんな単純な色ではなかった。それは、未熟さの青であり、痛々しい青あざの色であり、そして、すべてを包み込むような果てしない空の青でもあった。
この物語の登場人物たちは、皆、心に青い痣を持っている。親から受けた傷、社会との軋轢、自分自身への嫌悪。その痣は痛くて、醜くて、隠したいものだ。彼らの姿は、読んでいるこちらの心までヒリヒリさせる。しかし、物語を読み進めるうちに、その「あおい」が、決してネガティブなだけの言葉ではないことに気づかされる。
彼らは不器用で、間違いだらけで、まさに「青臭い」。でも、その青臭さの中には、まだ何にでもなれる可能性や、必死に生きようとする生命力が満ちている。傷つき、転びながらも、彼らは互いに関わり合い、ほんの少しだけ前に進もうとする。その姿は、痛々しいと同時に、どうしようもなく美しい。
物語のラスト、鹿ちゃんが見上げる空の青は、彼らの未来を象徴しているように感じた。心の中の青い痣は、簡単には消えないかもしれない。でも、その上には、どこまでも広がる青い空がある。痛みも未熟さも全部抱えたまま、それでも顔を上げて空を見ることができる。それこそが、生きる希望なのではないだろうか。この物語は、私の心の中にある「あおい」部分を、優しく肯定し、その先にある広い世界を見せてくれた
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